骨盤底筋というと、「鍛えるもの」というイメージを持つ方が多いかもしれません。尿もれや腟のゆるみ対策として、骨盤底筋トレーニングを聞いたことがある方も多いと思います。
しかし、MPPSでは少し考え方が違います。MPPSは、骨盤まわりの筋肉や筋膜が過敏になり、痛みを起こしている状態です。筋肉が弱いというより、力が入りっぱなしになっていたり、うまくゆるめられなくなっていたりすることがあります。その場合、さらに締める運動を頑張ると、かえって痛みが強くなることもあります。
MPPSに対する骨盤底リハビリでは、まず筋肉や筋膜をゆるめることが基本になります。必要に応じて、その後に筋肉を強化することを検討します。最初から「鍛える」ではなく、「ゆるめる」「動かせるようにする」「緊張をほどく」ことが大切です。
具体的には、姿勢の確認、呼吸の確認、股関節や腰まわりの動きの評価、筋膜マニピュレーション/トリガーポイントリリース、/神経モビライゼーション(マッサージのイメージに近いです)、ストレッチなどが行われることがあります。体表からのアプローチが多いですが、施設や症状によっては経腟や経直腸で行うこともあります。
MPPSの痛みは、人によってかなり異なります。腟の奥が痛い方、外陰部がヒリヒリする方、座ると会陰部がつらい方、膀胱や肛門まわりに違和感がある方など、症状の出方はさまざまです。そのため、骨盤底リハビリも全員に同じメニューを行うわけではありません。一人ひとりの痛みのタイプや生活背景に合わせて、プログラムを組み立てる必要があります。
また、骨盤底リハビリは「人任せ」「機械任せ」だけでは進みにくい治療です。自宅でのリハビリ、呼吸、ストレッチ、有酸素運動、姿勢の見直し、座り方の工夫など、日常生活での取り組みがとても大切です。治療を受ける時間より、日常生活の時間のほうが圧倒的に長いからです。
一方で、焦りすぎないことも重要です。介入を始めることで、一時的に痛みが増すことがあります。長く続いている痛みでは、改善までに年単位の時間がかかることもあります。痛みが少し軽くなった、座れる時間が増えた、性交後の痛みが短くなった、排尿後の違和感が減ったなど、小さな変化を積み重ねていく治療です。
骨盤底リハビリだけで完結するとは限りません。認知行動療法、薬物療法、トリガーポイント注射など、ほかの治療を組み合わせることもあります。日本ではMPPSに対応できるリハビリ施設がまだ多くないため、医療機関同士で連携しながら進めることもあります。
MPPSでは、「もっと鍛えなければ」と自分を追い込む必要はありません。むしろ、体がずっと力を入れて頑張りすぎている状態かもしれません。骨盤底リハビリは、その力みを少しずつほどき、体に「ゆるんでも大丈夫」と覚えてもらうための治療のひとつです。