「腟の奥が痛い」「外陰部がヒリヒリする」「性交痛がある」「膀胱炎のような違和感があるのに、尿検査では異常がない」「なんだかかゆい気がする」。このような症状が続いているのに、婦人科や泌尿器科で「大きな異常はありません」と言われ、どうしたらよいか分からなくなっている方はいませんか。
そのようなフェムゾーンの痛みの背景に、MPPSが関わっていることがあります。MPPSは、Myofascial Pelvic Pain Syndromeの略で、日本語では「筋筋膜性骨盤痛症候群」と呼ばれます。少し難しい名前ですが、一般の方には「腟まわりの筋肉の痛み」と説明するとイメージしやすいかもしれません。
骨盤の底には、尿道・腟・肛門を支える骨盤底筋という筋肉があります。排尿、排便、性機能にも関わる大切な筋肉です。この骨盤まわりの筋肉や結合組織が過敏になり、触れたり押したりしたときに痛みを感じる状態がMPPSの特徴です。
肩こりがひどくなると、首や頭まで痛くなることがありますよね。骨盤底筋にも同じようなことが起こります。筋肉がこり固まり、血流が悪くなり、過敏になることで、腟、外陰部、直腸、膀胱、下腹部、腰、臀部、太ももなど、さまざまな場所に痛みや重さが出ることがあります。
MPPSでは、痛みのきっかけになる場所を「トリガーポイント」と呼ぶことがあります。これは、筋肉の中で特に過敏になっている部位のことです。何もしなくても痛い場合もあれば、ストレッチ、圧迫、性交、長時間座ることなど、何らかの刺激が加わったときだけ痛む場合もあります。
症状は一定ではありません。ずっと痛い方もいれば、ときどき痛くなる方もいます。痛みではなく、ひりひり感、かゆみ、膀胱炎のような症状の方もいます。日によって軽くなったり重くなったりすることもあります。特定の姿勢や行動で楽になることもあれば、逆に悪化することもあります。ストレスや疲れ、冷え、睡眠不足などで症状が強くなる方もいます。
ただし、フェムゾーンの痛みをすぐにMPPSと決めつけることはできません。感染症、外陰部の皮膚疾患、子宮内膜症、GSM、膀胱痛症候群、神経痛など、ほかに確認すべき病気もあります。そのため、まずは保険診療の一般婦人科や女性泌尿器科で、検査や治療を受けることが大切です。
そのうえで、検査では大きな異常が見つからないのに痛みが続く場合、MPPSという視点が役立つことがあります。「異常なし」と言われたから痛みが存在しない、ということではありません。通常の検査では見えにくい、筋肉や筋膜の痛みが隠れていることがあります。
フェムゾーンの痛みは、恥ずかしくて相談しづらい症状かもしれません。でも、痛みは我慢するものではありません。腟まわりの痛み、性交痛、膀胱や肛門まわりの違和感が続くときは、MPPSという言葉を知っておくことが、次の相談先や治療を考えるきっかけになります。